願かけ絵馬の考現学
〜第三十六講〜








 
看護婦として
人々の健康の保持増進に
尽くすことができますように。
石巻赤十字看護専門学校 
須藤朋子 
[石巻市 羽黒山鳥屋神社]
  願文だけ読むと、職業人として自らの使命を全うしたいという、ごく真面目な願いである。
「人々の健康の保持増進に尽くす」なぞ、なかなか素人に言えるセリフではないのである。
だが、奉納者のところを見ると、何のことはない。
須藤朋子さんは、まだ職業人になっていない。
これから、看護婦をめざそうという看護学校の学生さんなのである。
つまり、願文の主意は、最初の1行に隠されていたのだ(少し、大仰だが)。
つまりは、看護婦になりたい、看護師試験に受かりたいという祈願なのである。
もちろん、須藤サンに、看護婦になりたいのは人々の健康の保持増進に尽くしたいからだという、大きな願いがあることは否定しない。
しかし、当面の願いは看護婦になること、看護師資格の取得にあることは、ご本人も認めるのではないだろうか。
察するところ、「人々の健康の保持増進に尽くす」というのは、学校の教科書か何かに書いてあった言葉であろう。
看護師心得十か条みたいなものがあって、その3番目の定めなのかも知れない。
どちらでもいいが、それをこういう願文に持ち出して、自分の高潔な大志を強調する手法、ストレートに「看護師試験に合格させてください」と書かないやり方というのは、神様にちょっとでも良く見てもらおうとしたのかも知れないが、少々素直でないようにも思われるのである。
まあ、他人の性格の素直さを云々する資格など、筆者にはまったくない訳であるが。
[第三十七講へ] [トップページへ] [第三十五講へ]