願かけ絵馬の考現学
〜第二十六講〜








 
○○○株式会社
○○○○○○○○事業部
営業部長 ○○○○が
失脚し、路頭に
迷うように!!

平成○○年二月 
○○○株式会社 
○○○○○○○○事業部 

従業員一同 
[赤穂市 大石神社
  株式会社の前の部分には、流通関係の、誰でも知っている大企業のカタカナ社名が入る。
ひとつヒントを言えば、プロ野球球団などを持つ、破綻寸前の例のところ、ではない。
営業部長の後には、当然、個人名。
そして事業部の前には通信関連の…、いやいや、怖くてとてもこれ以上は書けない。
怨恨関係の願かけ絵馬は珍しくないし、職場の人間関係などに起因するであろう、呪いじみた願かけも少なくない。
しかし、こんな有名大企業の、あるセクションの「従業員一同」名で奉納されたサンプルの採取は、筆者にとってこれが初めてである。
もちろん、絵馬に「従業員一同」と書かれていたからと言って、それが真実だとは限らない。
この営業部長氏に個人的怨恨を抱く人物が、「従業員一同」を騙って、嫌がらせ的に奉納したということもあり得るのだ。
だが、どうもそうは思えない。
ありていに言えば、非常にありがちな話なのである。
偏見と非難されるかも知れないが、承知で強引に仮説を立てよう。
そもそも営業部長などという職は、アクと押しの強い、どちらかと言うと人を押しのけてでも前に進もうとする人物が多い訳である。
元来そういう人でなくても、仕事の性格上、そういう風になってしまうことも少なくないはずだ。
で、当然、部下にも同じような行動を求めるし、結果を出せなければ、厳しく指弾する。
早い話、よほど出来た人物でない限り、恨みを買うこと日常茶飯事、と言っても良い立場なのである。
また、この事業部の手がける事業は広い意味でのIT関連業界で、なかには驚くような急成長企業も出しているのだが、この○○○株式会社はどちらかと言うと後発である。
流通業としての規模の大きさを生かして、じゃあIT関連でも何か…、という調子で始めたような新規事業である。
そういう状況で営業を任されたこの営業部長氏の焦り、部下に対する叱咤激励、成績を上げられない部下に対する罵倒、といったようなものは、容易に想像できるのである。
結果的に、この営業部長氏の器量はそれほど大きくなかった訳だ。
ともあれ、主君の恨みを晴らすべく、にっくき吉良上野介を血祭りにあげた赤穂浪士四十七人。
彼らが祭られる大石神社に奉納されているという状況を考え合わせると、何ともコワイ願かけ絵馬ではある。
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