願かけ絵馬の考現学
~第二十講~

願かけ絵馬の考現学

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悪運 悪縁 不運 病気

災難 事故 厄 けん力

死 クレーム みんなまとめて

縁が切れますよう。

渡辺潤子 
二十九才 
[京都市 安井金毘羅宮]

悪運、悪縁からはじまって、事故、厄あたりまでは判るのである。
あんまり語呂は良くないが、「家内安全」「商売繁盛」みたいなもので、ほとんど決り文句同然なのだ。
嫌だと思うものを並べ立てただけで、深い意味はないと言っていいだろう。

ところが厄の次に「けん力」と来て、死を挟んで「クレーム」と来ると、にわかに潤子サンが置かれた境遇、苦境が垣間見えてくるのである。
「けん力」と縁が切れますように、というのは、もちろん、権力が欲しくないという意味ではない。
権力を持つ者の横暴や身勝手な振る舞いから逃れたい、そういうものの被害からまぬかれたいと、そういうのであろう。

ズバリ、言ってしまおう。
この渡辺潤子サンは、どこかの会社で営業事務か何かの仕事に就いているのだ。
で、毎日毎日、いけ好かない中間管理職のセクハラまがいの言動に耐えているのである。
また、昼間はおおかたパチンコ屋か喫茶店で油を売っていて、夕方も退社時刻直前に戻ってきた担当営業マンから、

「コレ、明日までにやっといてよ。今月の締めに入れたいから。俺、これからもう一軒、寄るとこあるから」

と、束になった伝票の処理を押し付けられ、もとより仕事であるから断る訳にも行かない。
仕方なく、デートの約束だか友だちとの映画だかを、電話で断るハメになっているのである。

おまけにこの営業マン、仕事をたくさん獲って来るのをいいことに、契約の詰めが甘いものだから、後から顧客のクレーム電話が殺到し、アレコレ言い訳に頭を悩ますのは決まって潤子サンなのだ。
それとも、売っている製品がいい加減なのか。
かてて加えて、そういう電話の時に限って、役立たずの中間管理職はトイレかどこかに消えているのである。

判るなあ、その腹立たしさ。
「死」というのが、「けん力」「クレーム」という前後の縁切り対象から浮いてしまっているのは、ひょっとして、そんな営業マンや中間管理職の死を願う気持ちがあって、無意識に入ってしまったものかも知れない。
まあ、潤子サンには言ってあげたい。
人生悪いことばかりが続くはずはないのだから、決して挫けてはいけない。
くれぐれも、自棄食いなんかは禁物ですよ。

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紛らわしいが、大きいのが
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