願かけ絵馬の考現学
〜第七講〜 








 
一番好きな人と
西条の町で住めますように!

その人が、ずっと幸せでいてくれる事
そして健康な扶養家族になれることを!
  やまじ(印)
[東広島市 御建神社]
  今は東広島市などという味気ない名前になっているが、日本酒づくりで有名な広島県の地方都市・西条。
造り酒屋の蔵の白壁が美しい街だ。
そういう街で、好きな人と、静かに幸せに暮らしたいと、まあ、そんなほのぼのとした願いだとは読めるのである。
わざわざ判子まで押してあるのが、ちょっと気にかかるが、これはそれほど真面目に願掛けしています、ということだろう。神様に対する誠意である。
しかし、「健康な扶養家族になれることを!」というのは、いったい何なのであろうか。
前の行の言葉使いから言って、これは自分のことだろう。
苗字らしい署名からは男女の区別がつき難いが、2行目までの願文の内容から、願主はひとまず女性であるとしてみようか。
すると、健康な扶養家族になりたいのは、この女性である。
1行目は、好きな彼と西条の町で暮らしたいという願い。
2行目は、その彼がずっと幸せでいてほしいという願い。
そして、3行目は自分が「健康な扶養家族」になれるようにという願い。
そう受け取れるのである。
要するに、結婚後、自分は家にいて彼の扶養家族になるが、せめて健康でいて彼に迷惑をかけないようにしたいと、そういうことなのだろうか。
それとも、重点は「扶養家族」にあって、つまりは三食昼寝付きで気楽にやりたいという願いなのであろうか。
あるいは、願主を男と考えてみると…。
このやまじクンなる男性のお相手はエラク甲斐性のある女性で、彼は結婚後、彼女に養ってもらうということになる。
そうなると、せめて健康でという、何やら遠慮がちな願い事も頷けなくはないのだが。
どうにも意味の取りづらい、不可解な願文ではある。
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