願かけ絵馬の考現学
第六 








  私の左肩にいわれのない水子が
ついているといわれました。
その縁を断ち切って新しい道、
運が開けるよう、
元気が出るようお願いします。
  山口喜美枝 
[京都市 安井金毘羅宮]
  問題は、やはりこの「いわれのない水子」という部分であろう。
短い願文だけでは断言できないが、喜美枝さん自身も、決してその水子にいわれがあるとは思っていないようだ。
はっきり言えば、身に覚えはないのである。
ところが、身に覚えはないのに、宝石ジャラジャラいわせた、どこかの霊能占いのオバハンか、あるいは霊感商法の詐欺教団の教祖あたりから、
「ああ、アンタの背中、ほれ、その左の肩口に、供養されない、気の毒な水子の霊がついてます。その霊を供養して成仏させてあげないことにはねえ、こりゃあ、アンタの人生、今後もうまく行きませんよ」
などと言って、脅された訳であろう。
いやはや、この手の輩、いつまでも蔓延るものである。
だいたい、何で左の肩なのか。
左の肩凝りがひどいのは、左肩に水子の霊が付いているからだ、などと言うのであろうが、あまりにも安直、子供騙しの戯言である。
ペットの猿を背負ってる訳ではあるまいし、水子の霊が重くて肩が凝ってたまるかというのである。
喜美枝さんには、くれぐれも言ってあげたい。
人間、調子の良し悪しや浮き沈みはあるものだ。
しかし、そんなものは絶対に水子の霊のせいなどではないのである。
こうして神社に願かけしてる程度ならいいが、間違っても、霊感商法なぞに引っかかってはいけない。
しかし、こういう水子供養の話というのは、身に覚えのある女性が罪悪感からつい信じてしまうもののはずだが、喜美枝さんという人は、よほど騙されやすい、いや、信じやすい性格なのだろうか。
壷だの掛け軸だの、買わされなければ良いのであるが…。
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