２枚の絵馬が、ごくごく近い場所に掛けてあった。
署名もないから、この２枚の絵馬の願主に何らかの関係があるとは断言はできない。
が、これは絵馬の汚れ具合などから見て、同時期に奉納されたものという可能性が高く、第一、内容から言って両親と娘だと判断せざるを得ないのだ。

両親のほうは縦書き、娘（決め付けているが）の麻美クンのほうは横書きである。
片や、娘の不倫（だろうな）を嘆く両親。
片や、不倫であろうが、親が心配しようが、恋に生きたい娘。
言い争いに疲れ果てて、ひとまず休戦とばかり、久留米の宗社とされる日吉神社にお参りしたが、願掛け絵馬奉納に及んで、バトル再開となったようだ。

笑ってはいけないのだが、この神社の絵馬にはもともと神社の名前とともに、「円満成就」なる文言が刷り込んであるのが、なにやら可笑しい。
日吉神社の神様、というより産霊宮の神様が、どちらの願いを聞いてやるのか知らないが、どっちに転んでも「円満」には行くまいと思われる。

ただ、事態は決して楽観できる状況ではないはずなのだが、ご当人たちは、案外、そう深刻でもないように見えてしまう。

まあ、男である筆者としては、麻美クンはご両親に心配かけないほうが良いがなあ、と思う次第である。
男というのはズルイものだから。もちろん、この不倫相手のことである。