願かけ絵馬の考現学
~第十七講~

願かけ絵馬の考現学

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絵馬のアイコン写真

4月の日曜日くらいに
私の先祖の墓を直す
話で十津川村に
行ってまいります。

初めてこの神社に来
た時、池の鯉が一列に
十一ぴき、十二ひき
並んだ気がします。

(詳細な住所)
中埜永寿 
[三島市 三島大社]

この願文も、読んだ人の反応はきっちりふたつに分れるだろう。

ひとつはもちろん、「え?何?…これがどうしたの?」という反応。
もうひとつは、「わ!ついに出たか」と、なかば小躍りせんばかりのハゲシイ反応である。

実は筆者も、最初は何のことかよく判らず、どちらかと言えば前者の仲間だった。
「ほう、静岡県の三島から奈良県の十津川まで。そりゃずいぶん遠いのに大変だ」
と、まあ、その程度の感懐しか湧かなかったのである。

ちなみに、アイコン的写真では伏せておいたが、願文で書いてしまったので仕方ない。この人が先祖の墓の件で行く目的地は奈良県の十津川村である。

で、知らない人がいるといけないから説明するが、静岡の三島から奈良の十津川まで行くというのは、実に大旅行なのである。
いくつかルートはあるが、たとえば新幹線で京都まで2時間から2時間半、近鉄線に乗り換え、奈良を経て八木というところまで南下するのに1時間弱、そこから十津川までは4時間近くバスに揺られて、合計約7時間、乗り換え時間も考えればほぼ1日がかりという行程なのである。
新幹線で大阪まで出て、JR在来線に乗り換え、幕末天誅組の活躍で有名な五條に行き、そこで八木から来るバスをつかまえる手もあるし、あるいは名古屋からJR在来線で和歌山県の新宮まで大きく南下、そこからバスで北上するルートもあるが、所要時間は似たようなもの。
なにしろ、名古屋から新宮までが3時間あまり、新宮から十津川までのバスは2時間半、しかも午前中出発便しかないから前泊しないと…、
いや、そんなことはどうでもいい。ともかく遠いのである。

しかも、4月の日曜日は話をしに行くだけだから、あと何度か出かけるわけだろう。
そこまでしてご先祖の墓をちゃんと直そうというのだから、この中埜さん、よっぽどご先祖を大事にする人なんだなあ、などと考えていたのだが…。

何度か読むうち、願文の後半部分がどうにも気になってきたのである。

池の鯉が、一列に並ぶ…。

ハタと気付いた時、筆者は思わず「おお」と小声が出てしまった。
そう、中埜さんは、何かが一列に並ぶことに深い意味を見出す系統の人だったのである。
もちろん、パチンコ屋さんで数字が一列に並んで喜ぶ、といった人は少なくない。
何でもきれいに整列していないと気がすまない、整理整頓を好む潔癖症のような人物もいる。

しかし、この中埜さんの場合は、そういうのとは違う。
よくは知らないが、惑星が一列に並ぶことに大きな意味を持たせる人々もいて、そういう一派に似ているようでもあるが、やっぱり微妙に違うのである。
電波、などという言葉がちらりと脳裏をかすめた筆者は、深く自分を戒めた訳であるが、そういうふうなことに気付いてから前半部分を読み返すと、何やら先ほどとは違う意味が見て取れ、初めて全体の意味が理解できたのではないかと、妙に晴れ晴れした気分になった次第である。

それにしても、この三島大社の池の鯉、並んだのは一列縦隊だったのか一列横隊だったのか。
また、いくら11匹か12匹か確定はしていないとしても、泳ぐ池の鯉の数がよく勘定できたと思うのだが、と、恐いもの見たさで中埜さんに聞いてみたい気がするのは、筆者だけであろうか。

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