ほんとうに写真付きなのである。
おおぜいで撮った集合記念写真のようなものから、その「恥知らずな妻」の顔だけを切り取ったらしい、小さな切れっ端が貼ってあるのだ、絵馬に。
この女性は、わざわざ糊かボンド持参で絵馬の奉納に来たのであろうか。
それとも、絵馬をいったん家に持ち帰り、きちんと貼ってからもう一度納めに来たのであろうか。
どちらにせよ、その執念のほどが偲ばれる。

いわゆる三角関係というやつである。三角関数も難しいが、三角関係も面倒だ。
ともかく、そういう記念写真があるということは、この３人、もとは同じ会社に勤めていたのだろうか。

ちなみに、×××××は由緒ある大手の西洋系の宗教であるが、ここでは敢えて伏せておく。
察するに、この山添義幸なるモテモテ男と「恥知らずな妻」さんは同じ信仰を持っていたが、この願主の女性はそうではなかったのだろう。
その分だけ自分は不利で悔しい思いをしたのに、あろうことか、敵はまるで見せつけるみたいに、結婚前に義幸さんの子ダネまで宿してしまいやがったと。
その怒りたるや相当なものである。

そういう同じ信仰を持って、まだお腹の中かも知れないが子供までいる夫婦、それを別れさせようというのだ。
この執念、スサマジイのを通り越して、ソラ恐ろしい。

神様に向かって「山添義幸はあの妻といるより私といたほうが幸せです」ときっぱり断言するところなどにも、いっさい余人の介入を許さない、金輪際、聞く耳は持たぬという、強固な意志が見て取れる。
その毅然かつ断固たる姿勢の前には、触らぬ神に祟りなし、もうご自由にという他ない訳である。